(超スマート社会の実現)
こうした第4次産業革命の進展は、生産、販売、消費といった経済活動に加え、健康、医療、公共サービス等の幅広い分野や、人々の働き方、ライフスタイルにも影響を与えると考えられる。
超スマート社会では、企業は様々な情報をデータ化して管理することで、生産効率の改善、需要予測の精緻化、取引相手を含むサプライ・チェーンの効率的運用を図ることができることに加え、データの解析を利用した新たなサービスの提供、AIを活用した事務の効率化や新たなサービス提供などが実現できる。
また、消費者を取り巻く環境については、個人のニーズに合った財やサービスを必要な時に必要なだけ消費することが可能となり、例えば、シェアリング・サービスの普及により、財や資産を所有せずとも好きな時にレンタルして利用することが可能になる。また、デジタル・エコノミーの進展により、ネット上でのコンテンツ提供が増加しており、好きな時に好きなだけコンテンツを楽しむことができ、その費用については、基本的にはネット配信は限界費用がゼロであるために、アクセス料金は安価ないし無料のものも多くなっている。また、スマート家電等の普及は、電力使用の効率化になる。
加えて、フィンテックの普及は、金融のデジタル化による資産運用や決済、融資にかかる手間や費用の削減により、今までそういった金融サービスから排除されていた人々や企業も金融サービスを受けられるようになる。
さらに、人々の働き方や仕事への影響については、ICTの活用によるテレワークの更なる普及や、シェアリング・サービスによる個人の役務提供の機会の増加などにより、好きな時に好きな時間だけ働くというスタイルが増加する可能性がある。他方、AIやロボットの活用により、労働が機械に代替される事象が一層進む可能性がある。比較的スキルの必要のない一部の製造、販売、サービスなどの仕事に加え、バックオフィス業務などについてAIにより代替される可能性がある。従来では機械で容易には代替できないとされていた人事管理、資産運用、健康診断などのハイスキルの仕事についても、その一部が代替されるとの指摘もみられる。
また、社会全体でみると、高齢者にとっては、第4次産業革命の恩恵は相対的に大きいとみられる。具体的には、ウェアラブルによる健康管理、見守りサービスによる安心の提供、自動運転による配車サービスなど公共交通以外の移動手段の普及などにより、高齢者も活き活きと生活できる環境の整備が進むものと期待される。
政府が2016年1月に決定した「第5期科学技術基本計画」においては、「超スマート社会」、「Society 5.0」を打ち出している。少子高齢化が進む我が国において、個人が活き活きと暮らせる豊かな社会を実現するためには、IoTの普及などにみられるシステム化やネットワーク化の取組を、ものづくり分野だけでなく、様々な分野に広げることにより、経済成長や健康長寿社会の形成等につなげ、人々に豊かさをもたらす超スマート社会を実現することが重要な課題である。